February 02, 2021

若林恵 2017

メディアをやってて思うのは、当たり前だけど、あらゆる記事ってユニークなものとしてしかないわけ。同じ記事って二度と出ないの。稀に出たとしてもコンテキストが変わったから出るわけだし。だから、ある記事を分析してそれが読まれた要因を因数分解していっても、じゃあ次の記事をつくるのにそれが役に立つかって言ったらそうでもないんだよね。

―ふーん。そういうもんなんすかね。

それに、これ、そもそも考え方自体に矛盾があるんだよ。だってそうじゃん。「何一つ再現されない」っていう前提のなかで動いているものから再現性を取り出そうって、そのこと自体になんの意味もないんだもん。そりゃ探せば何かは出てくるかもしんないよ。でも、それがわかったところで次にやることといえば、「じゃあ、それとは違うことやろうぜ」ってことでしかないから。

―ひねくれてんなあ(笑)。

ちがうんだよ。むしろそれがヒトの本質なんだ、ってさっき挙げた本は言ってるわけ。デザインの起源は「違うもの」とか「無用なもの」をつくるところにあるって。人間を突き動かしてきたのは「機能」の追究なんかじゃないんだよ。道具というものの起源として、よく石を涙のかたちに削りだした「手斧」がよく参照されるけど、あれに関して重要なのは、「それが使われた形跡がない」ってことなんだよ。で、本のなかにマーシャル・マクルーハンの引用があるんだけど、それがめちゃくちゃいいの。

―ほお。

「機能するということは時代遅れであるということである」。よくない?

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