February 09, 2010

500日のサマー

NOL用下書き。いずれ本家サイトにアップする。
少しネタバレしていますのでご注意ください。

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互いに振り回されあう男性と女性の映画。一応男性が主人公。
相手役の女が、去年のイタリア旅行の飛行機で観たジムキャリーとの映画(イエスマン)で随分よかったので、観に行った。

○話の結論はさほど重要ではない

この話、簡単に言ってしまえば、「片思いをして振られるまでの話」なのだ。別にどんでん返しもトリックもない。ハラハラさせられるわけでも、人生の示唆があるわけでもない。でもその話を、どう語り、どう観客を感情移入させるか、というところでいろいろな工夫がなされていて、観ている者はあちら側の世界にかなり引き込まれてしまう。

実際、多くのレビュワーがストーリーについてさまざまな意見を述べている。それは、話の結論に対してではなくて、主人公の言動や、それに対する相手役の応対など、登場人物の一挙手一投足、あちら側の世界でおきたあんなことやこんなことについてであることが多いように思う。映画のつくりや、制作者の意図、ストーリー進行に向けた批評は驚くほど少ない。これは、ストーリーに微塵の違和感もなく、観る者が映画をリアリティとして捉えた、その結果であるように思う。(もしかすると、多くの恋愛映画がそうなのかもしれないが)

登場人物の言動の是非や、それに対する個人の感想、経験は他の方にお譲りするとして、ここでは、あえて映画の手法や細かい技法についての感想を述べようと思う。(とまあ偉そうに言っておりますが、別に僕は映画をたくさん観るほうでもありませんので、すでにその界隈ではメジャーな手法として認知されているものがあるのかもしれません。その際は悪しからず)

●時間軸を壊す

各シーンの最初に、今何日目か、の提示があって、エピソードが始まる。ひとつのエピソードが終わると、その日の日付から、次の場面の日付まで、ザ・ベスト10のランキングスコアみたいに表示がくるっと回転して、またシーンが始まる。この日付提示カットは全編共通で、「作者の独断」により次のシーンが選ばれていく。たとえばはじめは480日目、次に1日目、15日目、というように。

時間軸どおりに話を進めたらお決まりの展開になってしまうのを、あえてうまく崩壊させているようにも思える。確かに、1日目から始まるんだろうと思って観ていると、ファーストシーンは400何日目かで、意外だった。そのシーンが後々、ラストシーンにつながる重要な場面となったりもして、小手先が利いている。

ただ、日付が前後しまくるので、たまに前後関係がわからなくなる。なぜ主人公は落ち込んでるのか、その理由を理解しないまま話が先に進んでしまったりする。同じ場所での出来事を、日付を変えて対比させるなど、いい効果の場面もあるのに、残念だ(観る者の観察力、理解力の問題であるのだろうが)。まあ、もう一度観ればいいのだろう。

●子供時代のシーン

オープニングで主人公と相手役の子供時代の映像が流れるが、一部に、本人でないか、というくらい似ている子供が出ている。本人ぽい映像は顔のアップがあるが、似てない高校時代の映像は口元、引き画だけだったりするので、本当に本人の子供時代の映像なのかも知れない。

●ディズニー的な心象描写

主人公が嬉しがり、出勤途中に街の人とミュージカル風に踊り出す場面、ディズニー映画の「魔法にかけられて」パロディだろうか。もう少しドラマチックに撮ってもよかったのではないかと思った。ディズニーに比べるとすこしあっさりしていてせっかくの踊りが勿体無い気もする。ただ、場面としては凄くいい場面で、役割は十分果たしていると思う。

●2画面分割の同時進行シーン

主人公の頭の中の理想世界と、現実世界が同時に画面に表示される場面。左半分は理想世界、右半分は現実世界。観覧者が理解しやすいよう、左右で時間差をつけるべきところはつけ、同時進行にするべきところは同時に流す。演技の差もあっておもしろい。結局現実は理想どおりには行かず、理想を一度頭の中で考えた上で現実を過ごす主人公はとても空虚な目をしている。理想の中の女はとても優しいが、現実はとてもそっけなく社交辞令じみている。

同じ世界の内容を2画面分割、別カットで描写することは多くあるが、パラレルワールドを同時画面に表示する例はあまりないのではないか。

●手書き絵への変換

理想・現実場面の最後で主人公は相手役の女が婚約指輪をしている現実を目の当たりにする。1番の衝撃的シーン。パーティー会場から逃げ出して外に出ると、主人公の前に広がる街並みが鉛筆画に書き替えられていき、その後全て消しゴムで消される。主人公は建築家志望であるので、主人公の頭の中の処理の様子を描いたものなのかもしれない。

○で、相手役の女は、結局どうだったのか

すばらしかった。もう一回観たい。

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